September 11, 2011

EVERYBODY KNOWS THIS IS NOWHERE



ある人物が 毎日のように眺めたかもしれない夕景。

トパンガキャニオンにいまも残っている
ニール・ヤングが かつて住んでいた家に遊びにいった。
いまのオーナーが何代目なのかは知らない。
おそらく3代目か4代目だろう。
そのオーナーが 地下室を改造して 人を住まわせている。
いま そこを借りているのは 若い音楽家カップルで
彼らが招待してくれたのだ。

急斜面に建てられた家だから
坂道を上がっていくと まずガレージが見え
その前を通り過ぎてさらに上に行くと玄関になる。
そこはオーナーの住居で 目指す部屋は
ガレージ脇のドアを開け 階段を上がったところにある。
この部屋が地下室。地下室といっても窓はあった。

部屋はふたつ。手前がリビングルームで
奥はダイニングキッチン。その境の壁にガラス窓がある。
キッチン奥のアルコーブとともに
そこがレコーディングスタジオだった頃の数少ない名残だ。
『AFTER THE GOLD RUSH』の大半の曲は
1970年にこの場所で録音されたのだという。

キッチンの横の小さなドアから外に出て
石段を上がると裏庭だった。
谷に張り出すようにつくられたウッドデッキで
ビールをごちそうになった。
向かいの山に西日が当たり オレンジ色に光っている。

彼らもミュージシャンだから キッチンには楽器もあったし
簡単な録音ができるようにもしてあるらしかった。
でも かつてそこがどんなふうだったか 知る由もないけれど
いま現在の様子とかなり違っていることだけは確かだ。
親切に「遠慮せずに写真を撮ってもいいよ」と
声をかけてくれたが
室内でシャッターを切る気は起きなかった。

結局 ぼくは ウッドデッキから夕暮れの風景を撮った。
それだけが 昔もいまも変わらないものだと思ったから。