June 29, 2011

THE ARM



"用の美" の反対語は 何だろうか。

道具が 何世代も使われ続ける中で獲得していった
無駄や狙いのない 目的を果たすためだけのかたち。

ぼくは "焼き物" という言い方が好きではないが
陶器という単語には すでに "器" という
道具の名前が入っているから
あえてそう呼べば 日本人が "焼き物" に求めるのは
結局は 使い道なのかもしれないと ときどき考える。

前に イアン・マクドナルドの自宅を訪ねたとき
デスクの上に 掌くらいのサイズの
陶製のオブジェが置かれているのに気づいて
こういうものが家にあったらいいなと思った。
だから 東京ではじめて開かれるショーのために
イアンが オブジェをたくさんつくってきたことが
とても嬉しかった。

いま 手に入れたオブジェをどこに置くかを
ぼくは にやけながら考えている。
たぶん 仕事机のパソコンの向こう側にするはずだ。
そして こうやって文字を打つことに飽きたとき
視線を画面からはずした先にある
土の塊を焼いた 美しいオブジェを見つめるのだ。

用途のない美しさは 何と呼べばいいのだろう。


June 28, 2011

A HOUSE BECOMES A HOME



最新号の『HUgE』をながめていて
イームズハウスみたいだな と思った。
作原文子さんがスタイリングした巻頭ページのことだ。
もちろん 同じものが置いてあるわけではない。
でも GOOD STUFF だけが並ぶ住空間の
心地よさの質が 同じように感じられ
いま イームズハウスについて あらためて考えるのは
必然性のある偶然のように思えてくる。

ぼくは まだ手にしていないけれど
間もなく『BRUTUS』の最新号が発売される。
タイトルは "A HOUSE BECOMES A HOME" 。
これまで 二十世紀を代表する建築物のひとつとしてしか
見てこなかったイームズハウスを
チャールズとレイの暮らした家として
あらためて見直してみたら 何が見えるだろうか。
それが この特集のテーマだ。

見落としたものも たくさんあるだろうけれど
より多くの人にとって 新しい発見があるのなら
それ以上の幸せはない。


June 15, 2011

THE STILL-ROOM



四月にジューン・テイラーの話を聞きにバークレーへ行った。
いま書店に並んでいる『CASA BRUTUS』7月号のための取材だ。

ジューンへのインタビューでいちばん心に響いたのは
以前はオーガニックな素材という部分にだけとらわれていたが
誠実に果実を育てている小さな農家と深くつき合うようになって
信頼関係を築くことのほうが大切と思うようになったという話。

誤解してもらいたくないのは
オーガニックかどうかにこだわらないのではなく
もちろん オーガニックな素材を最優先にしているけれど
オーガニックであれば 何でも良いというわけではないし
信頼できる相手であれば オーガニック "認定" には
必ずしもこだわらないという意味だということ。

型に固執してばかりでは 本質を見失ないかねない。
そんなことを思い出しながら
トーストにメイヤーレモンのマーマレードをのせて食べる朝。


June 14, 2011

ART FOR ALL 8



ひとりで好きなようにつくる ZINE も面白いけれど
自分という小さな枠を ひとりで超えるのは難しい。
みんなでつくる MAGAZINE は
制約が多そうだけど どんな心構えで臨むかによって
自分の枠よりも大きなものになる可能性が高い。

ZINE より楽しい MAGAZINE をつくろう。

そんな気持ちで始めた SPBSの編集ワークショップが
いよいよ佳境に入った 先週の土曜日
撮影スタジオにみんなの歓声があがった。
デザインのラフが届いたのだ。

受講生たちとつくっている『art for all』は
いつもはぼくとデザイナーだけでやっている。
受講生たちみんなでつくる雑誌版『art for all』の
何と楽しいことか。みんな 実に頼もしい。

『art for all』8号はもうすぐ完成!