June 29, 2011

THE ARM



"用の美" の反対語は 何だろうか。

道具が 何世代も使われ続ける中で獲得していった
無駄や狙いのない 目的を果たすためだけのかたち。

ぼくは "焼き物" という言い方が好きではないが
陶器という単語には すでに "器" という
道具の名前が入っているから
あえてそう呼べば 日本人が "焼き物" に求めるのは
結局は 使い道なのかもしれないと ときどき考える。

前に イアン・マクドナルドの自宅を訪ねたとき
デスクの上に 掌くらいのサイズの
陶製のオブジェが置かれているのに気づいて
こういうものが家にあったらいいなと思った。
だから 東京ではじめて開かれるショーのために
イアンが オブジェをたくさんつくってきたことが
とても嬉しかった。

いま 手に入れたオブジェをどこに置くかを
ぼくは にやけながら考えている。
たぶん 仕事机のパソコンの向こう側にするはずだ。
そして こうやって文字を打つことに飽きたとき
視線を画面からはずした先にある
土の塊を焼いた 美しいオブジェを見つめるのだ。

用途のない美しさは 何と呼べばいいのだろう。