February 13, 2011

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今日はアンリ・サルヴァドールの命日だ。

好きなミュージシャンが亡くなるたびに
追悼めいたことを口にするのは流儀ではないけれど
ぼくにとって アンリは本当に特別な存在である。

カジノくんとこの日にワインを飲みながら
アンリを偲ぶのは 今年が三度目。
いつもの店が日曜日は定休だから
ぼくらは昨日の夜に押し掛けていって
ペタンクの栓を抜いてもらった。
アンリが愛したゲームと同じ名前のワイン。

カジノくんはアンリの南仏の別荘に行ったことがある。
本当はぼくが行くはずだった。
アンリが初来日公演を果たすことになり
パリでの取材が許可されたのだが
話は思わぬ方向に転がっていき
インタビューと撮影は別荘で受けるという連絡が来た。
その場所での取材は TF1 しか許されたことがない。
何という幸運。
でも 日程が決まってみると 見事に別の取材と重なった。
何という悲運。
ぼくはホンマタカシさんとロサンゼルスへ向かい
アンリの別荘には カジノくんに行ってもらった。

ワインの酔いが十分にまわってきた頃合いに
カジノくんが鞄の中をゴソゴソと掻きまわし
街の写真屋がサービスでくれるような
薄っぺらいアルバムを引っぱりだした。

古い写真を整理していたら出てきたんです。

ピアノを弾くアンリ
デッキチェアに寝そべるアンリ
クルーザーに乗るアンリ
そしてペタンクの競技会で獲得したたくさんのトロフィー。
最後の一枚は
別荘のポーチからこちらに向かって手を振るアンリだった。

さんざん楽しい話をして大笑いをし
杯を重ねた後でなかったら きっと泣いてしまっていただろう。