February 11, 2011

SORROW


前に福岡の『あまねや工藝店』で偶然に目にしたとき
ぼくは立花英久のファンになった。

とはいえ ただ一度きり観ただけだから
記憶に残っている像を ぼんやりと
頭に思い浮かべることしかできない。
ファンになったつもりでいたと言うほうが
正しいのかもしれない。

数日前 郵便受に絵葉書が届いた。
灰色の中に悲しそうに佇む女性の胸像。
裏返さなくても それが立花英久の作品だとわかる。
どうして『サボア・ヴィーブル』から
カミさん宛に個展案内が届くのかわからないけれど
この知らせがなければ
立花英久の作品をふたたび観る機会は
もっと先になっていただろうから
カミさんに感謝しなくてはいけない。

新作は 福岡で展示されていた像とは素材が違っていた。
はじめての試みだそうだ。
素材が変わることで 変わった部分と
それでも変わらない部分とがある。
記憶の中の像と 目の前の像とを比較しながら
考えをぐるぐるめぐらせていくうちに
目の前の像さえ 残像のように儚いものに見えてきた。

あらためて ぼくは立花英久のファンになった。

立花英久展「カナシミ」
二月十七日まで
六本木 AXIS ビル三階『サボア・ヴィーブル』にて